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オイラー標数


 PDF |Mobious関数

 小圏のEuler標数とはどうやって定義すべきか。もっとも単純なのは、小圏の分類空間を取り、そのホモロジー群を計算してそのランクの交互和ということが頭に浮かぶ。もっといえば、小圏の分類空間はCW複体になるので、その胞体の枚数の交代和で表してもよい。
 まあ、それはそれでいいのだが、例えばZ_2ぐらいの有限群を考えてみてもその分類空間は無限次元の実射影空間で、ホモロジー群は有限で終わらないし、胞体の枚数も無限なりEuler標数が定義できないのである。
 というわけでもう少し簡単な、というか、もとが有限なら有限の中で話をできるようにと別な角度からEuler標数を考えることができる。そこでEular標数の前にEuler formというものを考える。古典的なものは有限次元のベクトル空間へのアーベル圏を考え、Ext^i(X,Y)の次元の交互和を考えるというもの。もう一つはMobius関数の逆関数として定義するものである【Rei06】。これは小圏の射の本数からなる行列の逆行列の成分和を考えることと同じである。分類空間との対応を考えたとき、その障害となるのは対象上でのautmorphismである。これらがないような非輪状の有限の圏に対しては、その分類空間も有限なCW複体となり、その胞体の数とnerveの数が対応している。つまり、もとの圏でのEuler標数と分類空間のEuler標数が一致している。
 また、Reinsterはseries Euler標数という級数を用いた表示も考えている【Rei07】。そうなると通常のEuler formやEuler標数では整数値しか値に持たないが、有理数を値に考えることも必要になってくる。
 Euler標数は細分をとっても変わらないというのが空間的な見識なため、Hoyoの小圏の細分【Hoy08】をとっても不変な形が望ましい。細分された圏ように非輪状でフィルトレーションがある圏に対してのEuler標数も考案されている【Nog10】
 関数解析の視点からL^2やvon Neumann次元を用いたEular標数もThomas、Wolfgang、Romanの三人によって考えられている【TWR09】。彼らは小圏のホモトピー余極限、つまりGrothendieck構成を使ってEuler標数を計算する方法も調べている【TWR10】。他にはp-subgroup categoryについて【JM10】

 普通のEuler標数は小圏に対して整数を対応させるものであるが、これは有限集合に対して、その濃度を対応させるdecategorificationの一般化である。